高知新聞「医療のおはなし メディトーク」
脳神経外科「高齢者の薬物療法について」
もみのき病院 院長 森木 章人
日本は全人口のうち25パーセントに当たる3千万人が65歳以上という超高齢化社会を迎えました。そして高齢者の緊急入院の数パーセントは薬剤が原因で、中でも75歳以上の後期高齢者では15パーセント以上を占めるといわれています。
その理由は高齢者では複数の疾患を有し、しかも慢性疾患が多いために多剤服用、併科受診が行われること、また臓器予備能が低下し過剰投与(効き過ぎ)となることです。
薬が6剤以上になると薬物有害事象が著明に増え、5剤以上で転倒の発生頻度が増えるというデータもあります。また薬が原因でふらつき、抑うつ、記憶障害、せん妄などの症状が起こるとされる薬剤起因性老年症候群も最近問題となっています。
それらを防ぐためには、
- ①可能な限り非薬物療法を行う
- ②薬の数を最小限にする
- ③一包化など服薬法を簡便にする
- ④薬を用いる際には少量から開始して、長期的には減量も考慮する
- ⑤新たな症状が出現した際には、まず薬の有害作用を疑う
―などの注意が必要です。 (H26.3.25掲載)