高知新聞「医療のおはなし メディトーク」
複視について
もみのき病院 眼科 岡田 幸
高齢化社会の進行とともに、眼運動神経麻痺や斜視のため、「物が二重に見える」と眼科を受診される方が増えています。
物が二重に見えることを複視といいますが、片方の目をつぶると一つに見える複視を両眼性複視、片方の目でもダブるものを単眼性複視といいます。単眼性複視の多くは乱視などの屈折異常や、白内障など眼球自体の問題で、緊急性を要するものではないことがほとんどです。両眼性複視の原因はさまざまです。眼球を動かす神経に動眼神経、外転神経、滑車神経がありますが、そのうちの一つ、あるいは複数が麻痺を起こすと物がずれて見えるようになります。
特に注意が必要なのは、動眼神経麻痺で脳動脈瘤が原因の場合があります。また、糖尿病で神経の血行障害から神経麻痺を起こしたり、脳内の血管障害や炎症、外傷でおこることもあります。また眼球を動かす筋肉の異常で複視が起こることもあり、代表的な病気に甲状腺眼症や重症筋無力症があります。
以上の複視は見た方向でずれ幅が変わってきますが、ずれ幅が変わらない複視の中に、非対償性斜位いわゆる斜視があります。もともと斜位のある方が、加齢に伴い眼組織の力が弱まり斜視になってきたため、複視を自覚するものです。 白内障の手術をしてから、物が二重に見えだした、遠くを見るときはいいけれど近くを見るときに二重に見える、反対に遠くを見るときに二重に見えるなどの訴えが多く、プリズム眼鏡や手術で治療します。
このようにさまざまな原因で複視は起こりますので、眼科の検査だけでなく、全身疾患がないか血液検査をしたり、磁気共鳴画像装置(MRI)で脳内に異常がないか調べて、原因に応じた治療が必要です。 (H28.1.13.掲載)