アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬を用いた治療について
当院では、アルツハイマー病治療薬「レケンビⓇ(一般名レカネマブ)」、「ケサンラⓇ(一般名ドナネマブ)」の投与を開始しています。本剤は厚生労働省が定めた「最適使用推進ガイドライン」(下記)を守って使用することなっており、当院ではこの薬を安全・適正に使用できるよう体制を整え、2024年3月より治療を開始しています。
最適使用推進ガイドライン・レカネマブ
最適使用推進ガイドライン・ドナネマブ
アルツハイマー病の新薬が2種類 発売されました
「レケンビⓇ」は「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で製造販売を取得し、2023年12月20日にエーザイ株式会社から発売された新薬です。日本での販売はアメリカに次いで2か国目になります。アルツハイマー病に進行を抑制し、認知機能と日常生活の機能を遅らせることを実証し、承認されました。世界で初めての治療薬です。
そして、2剤目となる「ケサンラⓇ」が2024年11月26日に発売となりました(イーライリリー株式会社)。「レケンビⓇ」や「ケサンラⓇ」は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質を脳内から除去する新しい作用をもった薬剤で、抗アミロイドβ抗体薬と総称される薬です。
アミロイドβ とは
脳内で作られるタンパク質の一種です。健康な人の脳にも存在する物質で、通常は脳内のゴミとして短期間で分解、排出されます。
しかし、アミロイドβ同士がくっついて異常なアミロイドβ ができると、排出されずに脳内に蓄積され、健康な神経細胞にアミロイドβ がまとわりつきます。
そしてアミロイドβ の出す毒素で神経細胞が死滅して情報の伝達ができなくなり、徐々に脳が萎縮。その結果、アルツハイマー型認知症が進行していくといわれています。
衣(アミロイドβ)がまとわりついたエビ(神経細胞)(イメージ図) | |
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本剤投与で効果が期待できる方は?
軽度認知障害の方と軽度のアルツハイマー病の方になります。 無症状の方、中等度以上のアルツハイマー病の方は治療対象外になります。本剤の投与の有効性が期待できるかどうかは、投与前に当院で検査ならびに診察を受けていただいたうえでの判断となります。本剤の有効性が期待できない病状である場合や、禁忌にあたる既往歴がある場合は、他の治療を提案する場合がありますので、ご了承下さい。
投与手順について
初診の際は、投与の有効性についての検査を受けていただきます。検査には他覚症状の聞き取りが必要なため、同伴者が必要です。検査の結果、有効性が期待できると判断された場合には、ご本人とご家族の同意のもとに、再診と投与のスケジュールをご案内いたします。
(1)初回受診(初診)
・脳神経外科、精神科の両方の診察・MRI検査
・MMSE(精神状態短時間検査)、CDR(臨床的認知症尺度)の検査
・血液検査
・髄液検査(当院で施行) または アミロイドPET-CT(予約)

(2)2週間後に再診
・検査結果、治療適応について説明と同意・「治療不適応」となった場合は、他の治療の提案や外来で定期的なフォローをしていきます。

(3)2週間前後で入院調整
・初回投与は副作用の観察のため3泊4日の入院となります。初診日の主なスケジュール(予約制になります)
初診日は、水曜日、金曜日の午後になります。初診日は検査のみです。投与開始は後日になります。
かかりつけ医からの紹介状ならびに神経心理検査(認知機能検査)の結果がある場合は来院時にご持参ください。
また他の疾患で治療中の方は処方箋もご持参ください。
なお、脳動脈瘤などの血管病変がある方、過去に脳出血の既往のある方、抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を内服中の方は治療ができない場合がありますので、ご注意下さい。
検査結果のご説明後に、適応可能な場合は以下の追加検査を行います。 髄液検査(当院で施行) または アミロイドPET-CT検査の予約(高知大学附属病院、高知医療センター)
のいずれか。
投与スケジュールについて
・追加検査も含めた結果が治療適応となり、同意が得られた場合には、1回目の投与開始 となります(初診日より、およそ2週間後以降の予定になります)。
・薬剤投与は点滴で行います。1回目の投与は約30分~1時間かかります(初回のみ3泊4日入院、以後は外来での点滴治療になります。)
・その後、2週間後ごと(レケンビⓇ) あるいは4週間ごと(ケサンラⓇ)に投与を行い ます。
・その間、アミロイド関連画像異常(ARIA)などの副作用の有無を確認するためのMRIを 定期的に行います。
・最大の投与期間は原則として12~18カ月までになります。
費用について
本剤の投与は医療保険が適用されます。 費用負担は各種条件によって異なりますので、詳細は下記までお問い合わせ下さい。
なお、高額療養制度もご利用いただけますので、当院地域連携室にご相談下さい。
お問い合わせ先:医療法人治久会 もみのき病院 地域連携室
088-888-2227(地域連携室 直通電話番号)
(受付時間)月~金曜日 9:00~16:00
参考記事:下記よりご覧いただけます。
1)レケンビの治療を始める方とそのご家族へ(エーザイ株式会社)
https://medical.eisai.jp/leqembi/
2)ケサンラによる治療を受けられる患者さんへ(日本イーライリリー株式会社)
https://jp.lilly.com/kisunla-patient
3)認知症にならないために ~今からあなたができること~(もみのき病院HPより)
http://mominoki-hp.or.jp/meditalk29_0917.html
4)軽度認知障害とは(もみのき病院HPより)
http://mominoki-hp.or.jp/medichek_r6_0115.html
5)食事で認知症予防(もみのき病院HPより)
http://mominoki-hp.or.jp/meditalk25_07_06.html
6)認知症の診療について(もみのき病院HPより)
http://mominoki-hp.or.jp/medichek_r7_0114.html
7)進化する認知症治療(もみのき病院HPより)
8)「軽度認知障害 早めに治療を」(毎日新聞 令和6年3月22日掲載)
http://mominoki-hp.or.jp/images/media/pdf/mainichi_shinbun20240322.pdf
9)進化する認知症治療(もみのき病院HPより)
http://mominoki-hp.or.jp/medichek_r7_0314.html